認知症の家族と接する中で、「どう対応すればいいのか分からない」「つい感情的になってしまう」といった悩みを抱えていませんか?
認知症の方への不適切な対応は、症状の悪化や関係性の破綻を招く危険性があります。
この記事では、認知症の人にやってはいけない6つの行為と、その悪影響について詳しく解説いたします。
また、適切な接し方のポイントもご紹介しますので、認知症の方との良好な関係を築くための参考にしてください。
正しい知識を身につけることで、お互いにとって穏やかな日々を過ごすことができるでしょう。
認知症の人にやってはいけないこと6つ
認知症の方と接する際には、避けるべき言動があります。
この章では、認知症の人に対してやってはいけない6つの行為について詳しく解説いたします。
- 怒鳴ったり叱りつけたりする
- 無理に思い出させようとする
- 失敗を責める・間違いを指摘する
- 子ども扱いをする
- 急かしたり命令したりする
- 行動を制限したり閉じ込めたりする
怒鳴ったり叱りつけたりする
認知症の方に対して怒鳴ったり叱りつけたりするのは、最も避けるべき行為です。
認知症の症状により、同じことを何度も聞いたり、理解が困難になったりしますが、これは病気による症状であり、本人の意思とは関係ありません。
怒鳴られることで恐怖心や不安感が増し、症状の悪化につながる可能性があります。
また、怒鳴る声は記憶に残りやすく、家族への不信感を生む原因となるでしょう。
無理に思い出させようとする
「○○のことを覚えていませんか?」「昨日話したことを思い出してください」など、無理に記憶を呼び戻そうとする行為はやってはいけません。
認知症により記憶機能が低下している状態で、強制的に思い出させようとすると、本人にとって大きなストレスとなります。
思い出せないことに対する焦りや自己嫌悪を感じさせてしまい、精神的な負担を与えてしまうかもしれません。
失敗を責める・間違いを指摘する
認知症の方が失敗したり間違いを犯したりした際に、それを責めたり指摘したりするのは控えましょう。
「なぜできないの?」「前はできていたじゃない」といった言葉は、本人の自尊心を傷つけてしまいます。
失敗や間違いは認知症の症状の一部であり、本人が意図的に行っているわけではありません。
責められることで萎縮してしまい、積極性を失う原因となるでしょう。
子ども扱いをする
認知症になったからといって、子ども扱いをするのは適切ではありません。
「えらいですね」「よくできました」など、幼児に対するような話し方や態度は、本人の尊厳を損なう行為です。
認知症であっても一人の大人として尊重し、人生経験豊富な先輩として接することが大切です。
子ども扱いされることで屈辱感を覚え、関係性の悪化を招く可能性があります。
急かしたり命令したりする
「早くして」「急いでください」といった急かす言葉や、「これをやりなさい」「あれはダメ」といった命令口調での接し方は避けましょう。
認知症の方は情報処理に時間がかかるため、急かされると混乱してしまいます。
また、命令的な態度は反発心を生み、協力的な行動を妨げる要因となるかもしれません。
ゆっくりとした口調で、お願いするような話し方を心がけることが重要です。
行動を制限したり閉じ込めたりする
安全を理由に過度な行動制限をしたり、外出を禁止して家に閉じ込めたりするのはやってはいけません。
確かに安全面での配慮は必要ですが、極端な制限は本人の自由を奪い、ストレスや抑うつ状態を引き起こす原因となります。
適切な見守りやサポートを行いながら、可能な限り本人の意志を尊重した生活を送れるよう工夫することが大切でしょう。
認知症の人にやってはいけないことをするとどうなる?
不適切な対応が認知症の方に与える影響について解説します。
やってはいけないことを続けると、以下のような深刻な問題を引き起こす可能性があります。
- 認知症症状の悪化につながる
- 家族関係が悪化してしまう
- 本人の自尊心や意欲が失われる
認知症症状の悪化につながる
不適切な対応は、認知症の症状を悪化させる要因となります。
ストレスや不安が増加することで、記憶障害や見当識障害などの中核症状が進行しやすくなるでしょう。
また、徘徊や興奮、抑うつなどの行動・心理症状(BPSD)が現れやすくなり、日常生活がより困難になる可能性があります。
適切でない関わり方は、症状の改善を妨げ、病気の進行を早める結果を招くかもしれません。
家族関係が悪化してしまう
やってはいけない行為を続けると、認知症の方との信頼関係が損なわれてしまいます。
怒鳴られたり責められたりした記憶は残りやすく、家族に対する恐怖心や不信感が芽生える原因となるでしょう。
その結果、介護への協力が得られなくなったり、拒否的な態度を示すようになったりします。
家族間のコミュニケーションが困難になり、お互いにとってつらい状況が続くことになるかもしれません。
本人の自尊心や意欲が失われる
不適切な対応により、認知症の方の自尊心が深く傷つけられてしまいます。
失敗を責められたり、子ども扱いされたりすることで、自分に対する自信を失い、何事にも消極的になってしまうでしょう。
その結果、残存能力を活用する機会が減り、できることまでやらなくなってしまう可能性があります。
生きる意欲や希望を失わせてしまい、QOL(生活の質)の著しい低下を招くことになるかもしれません。
認知症の人への正しい接し方
認知症の方との良好な関係を築くために、適切な関わり方について解説します。
以下のポイントを意識することで、お互いにとって快適な生活を送ることが可能となります。
- 共感と理解を示すコミュニケーション方法
- 安心できる環境づくりのポイント
- 本人の尊厳を保つ関わり方
共感と理解を示すコミュニケーション方法
認知症の方とのコミュニケーションでは、共感的な態度を示すことが重要です。
「大変でしたね」「お疲れさまでした」といった相手の気持ちに寄り添う言葉をかけ、否定せずに受け入れる姿勢を心がけましょう。
また、ゆっくりとした話し方で、短い文章を使って伝えることが大切です。
相手の表情や仕草をよく観察し、言葉以外のサインも読み取るよう努めることで、より良いコミュニケーションが築けるでしょう。
安心できる環境づくりのポイント
認知症の方が安心して過ごせる環境を整えることは、症状の安定につながります。
馴染みのある家具や写真を配置し、昔から慣れ親しんだ環境に近づけるよう工夫しましょう。
また、日中は明るく、夜は暗くするなど、生活リズムを整える環境づくりも重要です。
危険なものは片付けつつも、過度に制限せず、本人が自由に動ける空間を確保することが安心感につながるかもしれません。
本人の尊厳を保つ関わり方
認知症になっても、一人の人間として尊重される権利があります。
意思決定の場面では、可能な限り本人の意見を聞き、選択肢を提示して自己決定を促しましょう。
できることは自分でやってもらい、必要な部分のみサポートする「自立支援」の考え方が大切です。
人生の先輩として敬意を払い、これまでの経験や知識を認める態度を示すことで、本人の自尊心を保つことができるでしょう。
認知症の人にやってはいけないことに関するよくある質問
認知症の方への対応について、多くの方が抱く疑問にお答えします。
適切な知識を身につけることで、より良い関係性を築くことができるでしょう。
- 認知症の人に言ってはいけない言葉とは?
- 認知症の人を怒ったり無視したりするとどうなる?
- 親が認知症になったらまず何をやるべき?
認知症の人に言ってはいけない言葉とは?
認知症の方に対して使ってはいけない言葉があります。
「何度も同じことを言わないで」「さっき話したでしょう」といった記憶に関する指摘や、「ちゃんとして」「しっかりして」といった曖昧な指示は避けましょう。
また、「ボケた」「おかしい」といった病気を揶揄する言葉や、「子どもみたい」「赤ちゃんみたい」といった幼児扱いする表現も不適切です。
代わりに「ありがとう」「お疲れさま」といった感謝や労いの言葉を多く使うことが大切でしょう。
認知症の人を怒ったり無視したりするとどうなる?
認知症の方を怒ったり無視したりすると、深刻な悪影響が生じます。
怒られた記憶は残りやすく、家族への恐怖心や不信感を抱く原因となるでしょう。
また、無視されることで孤独感や疎外感を感じ、抑うつ状態に陥る可能性があります。
これらの対応は症状の悪化を招き、介護への協力が得られなくなったり、攻撃的な行動が増えたりすることがあります。
感情的になりそうな時は、一度その場を離れて冷静になることが重要かもしれません。
親が認知症になったらまず何をやるべき?
親が認知症になった場合、まずは医療機関を受診して正確な診断を受けることが重要です。
早期診断により、適切な治療や対応策を検討できるでしょう。
次に、認知症について正しい知識を身につけ、家族間で情報を共有することが大切です。
また、介護保険の申請や地域包括支援センターへの相談など、利用できるサービスについて調べておくことをおすすめします。
一人で抱え込まず、専門家や同じ境遇の家族との交流を通じて、サポート体制を整えることが重要でしょう。
まとめ:認知症の人にやってはいけないことを理解した適切なケア
認知症の方への適切な関わり方を理解することは、お互いの生活の質を向上させる重要な要素です。
怒鳴ったり責めたりといった不適切な対応は、症状の悪化や関係性の破綻を招く危険性があります。
代わりに、共感的な態度で接し、本人の尊厳を保ちながらサポートすることが大切でしょう。
認知症は誰にでも起こりうる病気であり、適切な知識と理解があれば、穏やかな日々を過ごすことが可能です。
一人で悩まず、専門家や地域のサービスを活用しながら、家族全員で支え合っていくことが重要といえます。
認知症の方が安心して暮らせる環境づくりを心がけ、温かい関係性を築いていきましょう。
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